2003~2020年度の川崎医科大学衛生学の記録 ➡ その後はウェブ版「雲心月性」です。
同門会誌(1999年)によせて, 初代教授 望月義夫先生より
巻 頭 言
川崎医科大学衛生学教室同門会誌発行によせて
望月 義夫
このたび川崎医科大学の創立30周年を間近にひかえて、衛生学教室の歴史と現況を含んだ「川崎医科大学衛生学教室同門会誌」が発行される運びとなりましたことは、誠に意義深いことであります。会誌の企画、編集に当たられた植木絢子教授、大槻剛巳助教授をはじめ、教室員の皆さんのご努力に深く敬意を表します。
衛生学教室開設は、私が昭和47年4月1日に川崎医科大学に教授として、着任した時であり、開設時のスタッフは菊池和子助手、難波美子(佐藤)および伊藤恭子研究技術員でありました。まず講義および実習の準備から始めましたが、実際に活動を開始したのは昭和48年校舎棟および本館棟が完成し、現在の短大校舎から医大校舎棟6階の実習準備室および本館棟5階衛生学実験室に移転してからであります。研究活動は昭和48年以降51年にかけて各研究センターが整備、充実されると共に、徐々に進みだしました。
教室人事の充実もなかなか進まず、中村文雄助教授が昭和50年から1年間在任ののち転出、田中(浅原)廣子助手が昭和50年から6年間在籍し、私が学生部長、副学長を兼務し、教室の運営が十分行き届かないなかで、よく活躍してくれました。昭和57年植木絢子助教授を迎え、教室の体制も一段と固まり、平成元年4月川崎医科大学学長就任とともに、安心して植木絢子教授に後を託した次第です。
当初の教室の主な研究テーマは、下記のように環境汚染物質の生体への影響についてであります。従来行っていた放射性物質についての研究は施設面から断念しました。
1)無機汚染物質の生体への影響
(1)重金属類(鉛、カドミウム、水銀化合物)のラット甲状腺機能あるいは補体系への影響
(2)ヒト母体血および臍帯血中鉛濃度とデルタ・アミノレブリン酸脱水酵素との関係
2)有機環境汚染物質の生体への影響
塩化ビフェニール(PCB)、ベンゼン、四塩化炭素などの甲状腺機能あるいは免疫系におよぼす影響
3)生活関連物質の生体への影響
合成洗剤の生体への影響など
現在、植木絢子教授はスタッフと共に、発癌性をもつ重要な環境汚染物質としてアスベストに注目し、その生体への影響を主として免疫学的な立場からの解明に取り組み、着々と成果を挙げておられ、教室の活気溢れる様子が伝わってきます。誠に嬉しいことであります。
終わりに、衛生学教室の開設期から完成期まで、私の在学中に苦労を共にした教室関係者の皆さんの協力に心から感謝し、植木絢子教授はじめ教室員の皆さんのこれから21世紀にわたるご活躍と、川崎医科大学衛生学教室のますますの発展を心からお祈りいたします。